時をかける少年がインタビュー 自撮りでタイムワープ

陸上コースの上にストップウォッチ

とりあえず今まで、身近で戦争も内戦もなかったおかげだと思うが、私は生きてくることができた。しかし、すべてがすべてよかったわけではない。もし若いころの自分が今の自分を見たら、絶望的になるかもしれないし、今の自分の目から見て、過去の自分を強く批判したいところも多々ある。そんなことばかり考えていたら、毎日は苦痛になるだろうが、幸い、私も(おそらくだれもが)毎日を生きるのに精一杯だ。そんな中で、時を超えて自分と対話することができた人のことを紹介しよう。

Later That Same Life というドキュメンタリー映画の話だ。YouTubeに企画の段階でのサンプルが載ってるので、リンクを貼っておく。

“Later That Same Life” Sizzle Reel

1977年っていう、古代のような時代に、18歳だった米国の男の子が録画していた、将来の自分へのインタビュービデオをもとにした映画だ。題名の “later that same life” というのは、「同じ日の、あとの時間に」を “later that same day” と言ったりするので、それをもじったものだ。

Stoney Emshwillerくんも、今は56歳。暗い部屋で、同じようなジャケットを着た二人(いや、本当は一人)が向き合っている。18歳の彼は、1970年代のティーンエージャーだから、長髪で、ひげまで生やしている。ビデオの中に、小学校のころの彼もちょこっと映るんだけど、わざとその可愛さを打ち消すような容貌をまとって、一生懸命「もう俺は大人なんだぜ」って主張しているような感じだ。インタビューを受けているのは、メガネをかけて、髪も薄くなってきた、太っちょのおじさんだ。ていねいに、それぞれが「18」「56」と書かれたバッジを付けている。いや、そんなの付けなくても、どっちがどっちか分かるんですけど。

で、

18歳の自分「有名になったんですか? スーパースターとか?」
56歳の自分「 ほら、そういう質問をされるのが分かっていたから、君に会うのを先延ばしにしてきたんだ。」
18歳の自分「なーんだ。がっかりした。」
56歳の自分「失礼な。君の期待に沿うような人生を送らなくたっていいだろう。私は小説家になった。ほら、こういう本を書いた。」
18歳の自分「ああ、うれしいです。」

みたいなやりとりが続く。

18歳の自分「結婚してるんですか?」
56歳の自分「ああ。とても幸せな結婚生活を送っているよ」
18歳の自分「相手はどんな人?」
56歳の自分「いや、待て。彼女は今まだ14歳のはずだ。絶対、手を出すなよ」

とか、おじさんが反撃に出て、

56歳の自分「きみのことなら、なんでも知ってるんだよ、童貞くん」
18歳の自分「ちょwww」
56歳の自分「定義上そうだろう? あと数か月は」

なんてところは、笑い転げていいものなのか、若いころの自分をいつくしむ優しい姿に微笑みを送るべきなのか分からないが、見て、元気が出た。

編集作業はもちろん大変だったらしいけど、こんなふうに見てもらえるようなテープを若いころに作れたのも才能。今、それをみんなに見せて感動させることができるのも才能で、やっぱり優秀な人はすごいんですねー、と思ったけど、話の中に出てくる驚き、喜びや悲しみは、本当に私たち一人ひとりに当てはまるようなものばかりだ。

エムシュウィラーさんは、YouTubeでこのビデオを見せてネットで資金をつのった。無事、予定をはるかに上回る額が集まって、このプロジェクトは本格的な映画になるのだそうだ。

コンピューターを膝に置きソファに座る青年

56歳の彼が「きみのころには、こんなものなかっただろう?」と言いながら、スマホを見せびらかしたり、「声優って言葉、分かる? スノーボードは?」みたいに言う場面がある。全く聞いたこともない時代の話を突然聞かされて戸惑う18歳の彼。56歳の自分に向かって、「おじいちゃん、って呼んでいい? なんか、おじいちゃんと話しているみたいな気がしてきた」と言う。いや、正確には、きみのほうが大昔に生きているのだ。

私がこの話に接したのは、米国の公共放送NPRの生放送をネットで聴いていた時。朝、ふとんからなかなか出られなくて、スマホのアプリでラジオを聴いていた。

A Writer Gets Grilled By His 18-Year-Old Self In ‘Later That Same Life’

15+のころの私にしてみれば、もちろんまだスマホなどなかったから、電話でラジオを聴くって、何? 意味分からない、って感じだったろうな。

たしかに、私自身も、世界も、いろいろ変わったんだ。よくも、悪くも、ね。

インタビューを自撮りしておきなよ。今、こんな時代です、私はこんな感じです、ってことを記録し、未来の自分に問いかけてみよう。

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