高校『地理』学習のススメ──『地理』は暗記科目じゃない

青空の下に火山の噴火口

このあいだ友だちの家で、受験勉強について相談された。と言っても、親戚の子のことらしく、受験する本人は、その場にいない。その子は地理が不得意で、勉強の方法を教えてほしいと言う。

「え~? どんなことに興味があるかとか、どんな性格の子なのかとか、何もわからないのに? うまくいく勉強法なんて人それぞれでしょ」

「いや、一般論でいいからさ」

てなことを言い合っているうち、友だちは(現在の)高校の『地理』がどんな内容か、知らないことが判明した。
そこで、とりあえず今年1月に実施されたセンター試験の問題を、ネットで見てもらった。
すると、「へぇ~、こんなことも学ぶんだ」と感心すること、しきり。その場でいろいろ学んでいただきました。『地理』は暗記科目じゃないよ。う~ん、親戚の子には、その面白さ、楽しさ、うまく伝えてくれたかなあ。

というわけで、今回は《高校『地理』学習のススメ》をお届けします。

1.『地理』では自然災害について学べます。

日本では、地震津波火山噴火斜面崩壊などの地形災害が
(他国に比べれば)頻繁におこります。洪水高潮鉄砲水雪崩(なだれ)などの気象災害もよくおきます。
こうした災害が、どんなしくみでおきるのかどんな地域が危ないか、高校の『地理』では具体的に学べます。

いま、日本国内の各市町村は、「ハザード・マップ」と呼ばれる地図を
ネット上などで公表しています。これは、例えば

  • もし津波が来たら、どこまで水が来て、どのへんで水深何mになる(と考えられる)か、地図に色を塗って示してあります。

  • もし火山が噴火したら、どっちに溶岩流や火山灰が、どれぐらい流れてくるかの予想が描かれています。

  • 川がはんらんしたら、床上浸水になる可能性があるのはどの地域か、床下浸水になりそうな地域はどこなのか、図示されています。

こういう地図を、どう見るか、を『地理』では学べます。地名から「ここは昔からよく水につかった場所だよ」とか「ここの裏山は崩れやすいよ」とか、わかる場合もあります。あらかじめ危険な場所がわかっていれば、実際に災害がおきたときに被害を最小化できるでしょう。災害列島ニッポンで生きていく人の、必須知識です。

古地図の上に帆船の模型

photo by djandyw.com

2.『地理』では環境問題について学べます。

日本は、水俣病やイタイイタイ病などの公害病を経験し、残念ながら、多くの被害者を生んでしまいました。でも、その反省をふまえて、さまざまな環境対策とってきました
いま、地球規模の環境問題がいくつもの国際機関で論じられています。地球温暖化砂漠化森林破壊酸性雨などなど。
こういう環境問題も、どういうしくみでおこるのか、『地理』で学びます。環境が悪化すると、私たちの生活にどんな弊害が生じるのかも学びます。
環境問題は、国や、自動車メーカーや、石油会社だけが取り組めばいいわけではありません。私たちひとりひとりが、ふだんの生活で、電気を使いすぎないとか、空き缶やペットボトルをリサイクルするとか、いろんな対策を積み重ねることで、環境を悪化させないようにすることが大切です。そのためにも『地理』を学ぶことは重要です。

3.『地理』では異文化について学べます。

世界には、いろんなコトバを話す人、いろんな宗教を信じる人がいます。いろんな家に住み、いろんな服を着て、いろんな食べ物を食べている人がいます。

  • どこの国ではナニ語を話す人が多いのか、

  • ナニ教を信じる人が多いのか、

  • 信者たちはどんな宗教生活をしているのか、

を『地理』では学べます。
「直射日光や砂嵐から肌を守るために、長袖なんだな」とか「1日の寒暖の差が大きいから、土壁を厚くして外気の影響を小さくしてるんだな」とかもわかります。
最近は日本にも留学生や実習生や旅行者がたくさん来ているし、国内でスポーツなどの国際的なイベントがあれば、ますます外国人と出会うチャンスは増えるでしょう。もちろん海外に行く人もいるでしょうし。無知や無理解は、差別や偏見につながるので、(ぜ~んぶ知りつくすのは無理でしょうけど)あるていど知っておくといいですね。
いま、中東でおきている内戦や、ヨーロッパに流入している難民が、どうして発生したのか、背景を知ることもできます。解決策を自分なりに考えたり、政治家や専門家が言っていることに対して意見を持ったりするのにも、問題の背景を知っておくことは大切です。

4.『地理』では特産品について学べます。

先ほども少しふれましたが、世界にはいろんな食べ物を食べている人がいます。
それぞれの地域の気候・風土にあった作物を栽培し、家畜を飼育して、それぞれの地域に伝わる調理法で料理した食べ物があります。『地理』では、そうした食べ物についても学べます。Eテレの「高校講座・地理」では、そんな料理もいろいろ紹介しています。
昔は「物産の地理」なんて言われて、コーヒー豆の生産はどこどこで多いとか、石炭はどこの国でたくさんとれるとか、りんごは何県だ、肉牛は何県だ、なんてのを覚えたもんです。「覚えなきゃいけない」と思うと大変なんですが、スーパーや八百屋に行けば、トマトやピーマンが何県から来てるか、マグロやサーモンがどの国から来てるか、わかります。いまは日本でもいろんな国の料理を食べられる店があるので、そういう店で食べてみるのもいいでしょう。お酒を飲める年齢になったら、どこのビール、どこのワインがおいしいか、飲み比べるのもいいでしょう。これも異文化理解につながります。
いっぽう、石炭や石油や鉄鉱石などの地下資源がどこに埋蔵されているかは、地形のなりたちと関係があり、そうしたことも『地理』で学びます。日本は地下資源が少ない国なので、海外からの輸入に大きく依存していますが、どこが資源産出国かを理解していると、世界経済の動きがいくらかわかります。
世界経済の話が出たついでに言っておくと、円高になると日本からの海外旅行がおトクとか、円安になると日本製品が海外でよく売れるとか、そんなことも学びます。どうして日本の自動車メーカーがアメリカに工場を建てたのか、日本の電気機械メーカーが東南アジアに工場を建てたのか、もわかります。

キャベツ、ザクロの他、野菜類に卵

5.『地理』は受験に有利かも?

上で述べたような、実生活に役立つようなことを学べて、それが受験科目にできるんなら、おトクではないでしょうか。しかも、

  • 「北極・南極に近いと寒く、赤道に近いと暑い」とか、
  • 「お米を作るには雨がたくさん必要」とか、
  • 「外国産の安い肉は、わずかな人数で大量の家畜を(ざっくり)飼育してるから安い」とか、
  • 「海のない国では魚をあまり食べない」とか、

もう知ってること・わかってることや、ちょっと考えればわかることがたくさんあります。そんな知識で(あるていど)点を取れるなら、いいんじゃないでしょうか! 絶対オススメですよ。

6.高校を(とっくに)卒業しちゃった人に。

先ほどふれましたが、Eテレ(NHK教育テレビ)では毎週金曜14:40~15:00に「高校講座・地理」を放送しています。ネットでも動画が見られます。プレートの動き(地震のしくみ)とか、ユネスコ世界遺産の風景とか、各地の衣食住とか、ビジュアルを多用して理解しやすく工夫されています。オススメです。もともと高校生むけに作られていますが、高校生以外もご覧になれます。
山川出版社からは一般読者むけに『もういちど読む・山川地理』(1500円+税)という本も出ています。高校で『地理』を学んだ経験のない人でも読めます。これもオススメです。ぜひぜひ、みなさんが高校『地理』を学ばれることを願ってやみません。

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