チカンに遭い続けた日々  実はけっこういるんだよ

多肉植物のなかに白いなにか

 こんにちは。高木です。今日は思い切って過去を晒します。

 チカン(痴漢)に遭ったことのない人には「チカンなんてホントにいるの?」って感じがあると思う。でも、わたしは生き証人として宣言する!「中学〜高校までの6年間の通学でわたしは3日に2日はチカンに遭った」。

 わたしがチカンに遭った路線を書いておこう。それは東京メトロ・丸ノ内線。椎名林檎も「丸の内サディスティック」で歌っているけど、あそこに出てくる駅名よりも重要なのはこの線が大手町・東京・霞が関・国会議事堂前を通っていること。東京の伝統あるビジネス街、官公庁街を通っている。乗客は男性のほうが多くて、通勤・通学時には「Tシャツにジーパン」なんて格好のひとはあまりいなくて、きちっとしたスーツ姿のひとがとても多い。そういう線でチカンに遭いつづけた。

英国の地下鉄駅構内 赤い扉の車両

チカンの手口とのたたかい

 チカンはまず正面からやってこない。
誰が犯人だかバレちゃうからね。
だから、背後、または斜めうしろから手を出してくる。

それでお尻を触ったり、スカートの下に手を入れようとしてくるわけで、ここでただ一つ盾(たて)になるのは学生カバンだった。昔ふうの革のやつだったのがよかった。教科書やノートは入れず、ペチャンコにしてカチカチに固めて盾にする。
 カバンを持ってみてほしい。ふつう身体の横にもつでしょ?これを身体の後ろに回す。うでがねじれて不自然な姿勢になるのがわかると思う。そんな姿勢をぎゅうぎゅう詰めの電車のなかでとり続ける。そして、下半身をガードする。でも、電車は駅ごとに乗降があるし、揺れるわけでそういう隙をみてチカンは手を伸ばしてくる。その手を追いはらうようにカバンを動かす。こんなたたかいを続けていた。
 しょうもない工夫もしていた。乗る電車を変える。乗る車両も変える。それでもチカンはついてくる。リスクのある戦術もあった。それは電車のドアが閉まる直前に電車に飛び乗るというもの。背後でドアが閉まれば後ろは安泰だ。けれど、その後に誰かが飛び乗ってくることもあって、そうなると背後の守りはできない。タイミングがむずかしい方法だった。
 こんなことを書くとわたしばかりがチカンに遭っていたように見えるけれど、同級生のほとんどがチカン体験をしていた。なかには「電車に乗るときは手にカミソリを持つ」って言っていた猛者(もさ)もいた。ほんとうにカミソリでチカンを傷つけたかどうかは知らないけど。

 わたしの体験からチカン率を割り出してみる。だいたい電車一両のラッシュアワーでの乗員数が300人。その6割が男性と仮定。つまり180人。そこに4人か5人くらいチカンがいる(わたし調べ・丸ノ内線の場合)。すると2.2%~2.7%くらいが男性のなかのチカンということになる。男性100人の会社や役所で2〜3人はチカンなのだ。男性1000人いると20〜30人がチカン。すさまじいね。(いや、これはあくまで丸ノ内線からの推定です)。「女性専用車両」がなぜ必要なのかの答えになると思う。

 高校を出て京都に来てからはチカンに遭うこともなくなった。それで思うのだが、チカンが狙っているのは制服姿の女子が多いということだ。わたしはセクシー度0と言っていい。でも、制服のときにはイヤというほど被害に遭った。制服は「女子というおもちゃ」のしるしだったのではないか。年下で、力も強くなさそうで、いじめるのが面白い存在に性的な暴力をふるうという快感があるのだろう。

 (なお、女性のチカンも男性に対する男性のチカンも存在しているとは思うのだけど、何も知らないのでそれには触れません)。

制服姿の女子たちの下半身 スカートと靴

声をあげられなかった

 これだけイヤな目に遭いつづけながら、わたしは「やめてください!」「この人、チカンです!」という声を一度もあげられなかった

 振り返ると情けない気もするが、**本当に無理だった。
たとえば、足をいきなり蹴られたとする。え?と思うと同時に「なにすんねん?」という反応ができると思う。蹴られて恥ずかしくなるひとはあまりいないはずだ。

 だけど、チカンはやられると「恥ずかしくなる」。辱め(はずかしめ)を受けたように感じる。じぶんが汚い存在になってしまったように思えて、声など出ない。「恥辱」(ちじょく)ということばが本当にぴったりする感覚だ。からだはこわばってしまい、唯一できるのがカバンを動かすことになる。

 これがレイプなどのもっと深刻な性暴力となったら、どれだけつらい思いになるだろう。声をあげるのはなかなかむずかしい。

 だから、チカン被害もレイプ被害も明らかになっているのは、一部のものだと思う。被害は世間が思うよりずっと多い。

 さいわい、電車のなかで助けてくれたひともいた。わたしが不自然にからだを動かしているのをみて、無理やりスペースを作って移動させてくれたり、それこそ盾のように割り込んでくれたりしたひとがたまにいた。
たいていは年上の女性だった。

 制服を脱いでずいぶん経った今、わたしは自分がチカンを見たら手を取って告発したり、完全に確認できないときはスペースを作って被害に遭っているひとを助けようと決めている。チカン、許さん!

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