『小さいおうち』表紙 オレンジ色の地にクリーム色の円。中に男性と女性。

 『かめくん』を読みながら、戦争と日常というテーマについて考えているとき、思い出したのが中島京子(なかじまきょうこ)の『小さいおうち』(文春文庫)だ。2年前(2014年)山田洋次監督によって映画化されたので、知っている人も多いと思う。『小さいおうち』も戦争と日常の関係を考えるうえでおもしろい小説だ。
 

 昭和の初め、尋常小学校を卒業し、山形から上京したタキは、女中として平井家に奉公する。平井家は、おもちゃ会社の重役である夫と若く美しい妻の時子、小学生の息子恭一の3人家族。その家族が住んでいるのが東京の郊外にある赤い三角屋根洋館、すなわち「小さいおうち」である。タキはそこを「終の棲家(ついのすみか)」と思い定めるほど、大好きだった。続きを読む

『かめくん』書影 グレイにオレンジ色で書かれた少女が振り返っている

 北野勇作(きたのゆうさく)の『かめくん』(河出文庫)はとても不思議な小説だ。かめくんはクラゲ荘という木造二階建てのアパートに住んでいる。アパートの管理人、ハルさんには「なんだ、カメかい」なんて言われもしたけど、入居できたのは、ちゃんと仕事をしているからだ。ふだんは倉庫作業員としてフォークリフトを操作しているが、ときに木星からの荷物に紛れ込んでくる巨大生物ザリガニイと戦ったりもする。仕事帰りには、駅前の商店街で買い物をする。休みの日には図書館に行く。図書館にはミワコさんがいる。レプリカメの研究をしているミワコさんにかめくんはときどき協力する。
 
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夕暮れ空 青い空に広がる雲が朱色に染まっている

 わたしは音痴なのにカラオケに行くのが好きだ。自分で歌うよりもひとが歌うのを聞いているのが好きで、とりわけ違う世代のひとと一緒に行くのが楽しい。どんな時代にどんな歌が歌われていたのかを知るのが面白いからだ。そんなわけでじーちゃんもカラオケに連れて行ったことがある。
 

 違う世代のひとからは思いもかけない歌を教わる。
 今日、紹介するカルメン・マキ&OZの1975年の「私は風」なんかもそう。なんと日本では1970年ごろに「日本語でロックを歌えるのか」なんていう論争があったそうだ。今となっては「えーー?」って感じで、どっちでも、混ぜてもいいやんと思うけれど、当時はまじめに考えられていた。
 

 それからたった5年でこのカルメン・マキの日本語での本格的ハードロックが誕生していると思うと日本のロックの進化って素早かったんだとわかる。

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空色のバックに羽のようなもの、その上に水滴1つ

「私、死んじゃったんですか」
 

23歳の新米僧侶、海生(かいせい)が葬儀デビューを果たしたその夜、亡くなったはずの女子大生が現れた。おそるおそる尋ねる海生。「…碕沢さんですよね?」「はい」「…お亡くなりになりましたよね?」「やっぱりそうなの?」
 

 白岩玄(しらいわ げん)の小説『空に唄う』(河出文庫)に描かれるゆうれいは、あまりゆうれいっぽくない。この世にうらみを残して化けて出たどころか、自分が死んじゃったことさえよくわかっていない。しかも、碕沢さんは、とても美人だ。
 
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アラブ建築 アルハンブラ宮殿の回廊アーチ

アラブ世界って、なんとなく取っ付きにくい感じがしますよね。私たちとつながりが少ないって言うか。もっと言うと、すぐ連想が「テロリスト」に行っちゃうし。

でも、戦前の日本人がみんな旗を振って侵略戦争を応援していたわけでもないのと同じように、アラブにもいろいろな人がいて、笑ったり泣いたりしているんだとは思うんです。でも、そういう面に触れることがなかなかできない。

一人で歌ってみた!アラブの名曲

今日ご紹介するのは、「アラブ音楽の進化」っていう YouTube のビデオなんですが、まあ、これを見てアラブが分かるわけじゃないんだとは思います。でも、面白いんで、見てください!

アラ・ワルディさんという人が一人でいくつもの役をこなして、過去1世紀のアラブ音楽の代表的な曲を次々と歌って紹介してくれます。最大でいっぺんに十人出てきますが、全部一人ですよ、一人!

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青空の下に火山の噴火口

このあいだ友だちの家で、受験勉強について相談された。と言っても、親戚の子のことらしく、受験する本人は、その場にいない。その子は地理が不得意で、勉強の方法を教えてほしいと言う。

「え~? どんなことに興味があるかとか、どんな性格の子なのかとか、何もわからないのに? うまくいく勉強法なんて人それぞれでしょ」

「いや、一般論でいいからさ」

てなことを言い合っているうち、友だちは(現在の)高校の『地理』がどんな内容か、知らないことが判明した。
そこで、とりあえず今年1月に実施されたセンター試験の問題を、ネットで見てもらった。
すると、「へぇ~、こんなことも学ぶんだ」と感心すること、しきり。その場でいろいろ学んでいただきました。『地理』は暗記科目じゃないよ。う~ん、親戚の子には、その面白さ、楽しさ、うまく伝えてくれたかなあ。

というわけで、今回は《高校『地理』学習のススメ》をお届けします。

1.『地理』では自然災害について学べます。

日本では、地震津波火山噴火斜面崩壊などの地形災害が
(他国に比べれば)頻繁におこります。洪水高潮鉄砲水雪崩(なだれ)などの気象災害もよくおきます。
こうした災害が、どんなしくみでおきるのかどんな地域が危ないか、高校の『地理』では具体的に学べます。
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顔が見えない女性が花火を持っている

障害は個人のなかにあるのか?

 「この人の右手には障害がある」
 「あの人には知的な障害がある」

 このような表現が、よくなされます。
 (ちなみに、表現の問題で言えば、「障害」と「障がい」(「害」という漢字のひらがな表記)の問題もありますが、これについては、ここでは扱いません)

 私もついついこのような使い方をしてしまいます。そのほうが、他の人に通じやすいからです。けれども、こうした言い方は、よく考えてみればおかしいはずです。人間それじしんや、人間の部位に「障害がある」という言い方は、日常的には使われますが、次のような言い方でも通じるはずですよね。

 「この人の右手は動かしづらい」
 「あの人は考えることが苦手である」

 そして、「右手が動かしづらい」、「考えることが苦手である」ことが、その人たちが社会において生きていくうえで困難であるとき、そこで生じることが「障害」であるはずなのです。
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巨大な岩山が連なる荒れた大地に豆粒のような人間2人

 SFに、科学の進歩に対する「恐れ」がなければ単なる絵空事になってしまう、と言ったのは黒澤明だ。その観点から、黒澤はA・タルコフスキーの『惑星ソラリス』を「怖い映画だ」とほめたのだった。『ソラリス』は未来を、ディストピア(ユートピアの反対、人間が人間らしく生きられない暗黒の世界)のように描いているわけではない。だが、観る者にふるさと地球への郷愁を呼び起こさせながら、「人間」自身のこともまだわかっていない人間が「宇宙」へ飛び出してどうするというのか、と問いかける。人間のごうまんを叱るような、哲学的な映画である。

 

 2012年のSF映画『プロメテウス』は、そんな哲学的な難しい話でなく、ドキドキハラハラしながら楽しめるエンターテイメント。でも、実はこの作品にも、「人間」をめぐるけっこう深い問いが隠されている。
 この映画は、『エイリアン』の監督リドリー・スコットが、『エイリアン』の前日譚、または背景にある物語として企画したもの。別の監督で『2』『3』…と作られていった地球人VSエイリアンの続編シリーズとは趣旨が違う。エイリアンも登場するけれど、それよりもそれを作った宇宙人たちに焦点を合わせているのだ。

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陸上コースの上にストップウォッチ

とりあえず今まで、身近で戦争も内戦もなかったおかげだと思うが、私は生きてくることができた。しかし、すべてがすべてよかったわけではない。もし若いころの自分が今の自分を見たら、絶望的になるかもしれないし、今の自分の目から見て、過去の自分を強く批判したいところも多々ある。そんなことばかり考えていたら、毎日は苦痛になるだろうが、幸い、私も(おそらくだれもが)毎日を生きるのに精一杯だ。そんな中で、時を超えて自分と対話することができた人のことを紹介しよう。

Later That Same Life というドキュメンタリー映画の話だ。YouTubeに企画の段階でのサンプルが載ってるので、リンクを貼っておく。

“Later That Same Life” Sizzle Reel

1977年っていう、古代のような時代に、18歳だった米国の男の子が録画していた、将来の自分へのインタビュービデオをもとにした映画だ。題名の “later that same life” というのは、「同じ日の、あとの時間に」を “later that same day” と言ったりするので、それをもじったものだ。

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黒に発光体2つ

これはアリ?ナシ?

唐突ですが、質問です。みなさんにとって、「アリ/ナシ」の境目ってなんですか?「これなら全然OK」と思うときと「いやー、これはNGでしょ…」と感じるとき、どんな違いがありますか?

食べ物については、意見が分かれやすいかもしれないですね。以前、いつになく本格的な感じの寿司屋に行ってみたときのこと。世にいう「回らない」寿司屋です。そのお店では、握ってもらった寿司はお皿に乗せずに、直接カウンターのうえにおいて、箸を使わずに手で食べる形式でした。普段、あまりこういうお店に来たことがなかったので、食べ物を直接カウンターに置くことに、はじめはちょっとぎょっとしました。僕はすぐになれたので、「これはナシ!」とまでは思わなかったけれど、もしかすると、何か食べるときには、お皿と箸がないとどうしても抵抗があるというひともいるかもしれません。あるいは、その反対に、「箸使うとか絶対ナシ!邪道!」というひともきっといると思います。

寿司 アジ

または、着るものについての感覚とかも。僕は大学の寮に住んでいるんですが、寮の冬の風物詩のひとつは、「どてら」です。寒くなってくると、暖かくて着心地も楽な「どてら」を羽織ってそのあたりをうろうろしている寮生が現れだします。僕もどてら愛用者で、どてらはコタツと並んで冬の必須アイテムです。そんなどてらについて、ある友人の寮生がふとこんな疑問をつぶやきました。「どてらを着て外出するのは、どこまでOKなのか?」
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ソファのある室内

テレビ窓とは何か

家にこもって編み物をするのがメインの生活をしています。
ソファーに座ったままで部屋の窓を眺めると、見えるものは趣味のベランダ園芸でわさわさと育てている草花だけで、外の景色はあんまり見えません。
なので外と繋がっている窓的なものはテレビだけです。
外に出かけることも他者と交流することもそんなに好きではないのにテレビに映る外や人は好きで、編み物もテレビを見ながらできてしまうので、テレビを見ている時間がすごいことになっています。
引きこもりの部屋から見えるテレビの景色を旅の思い出を話すように伝えてみたいなあと思います。

本の上にリモコン

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枯れ葉の上に本

はじめまして。ポレとわこといいます。私は3月のある日まで、あるところで、
「ちょっとおねえちゃん、市バスの時刻表がみたいんやけど…」
「自分で椅子を作ってみたい!」
「交通事故についての、裁判の記録はどこで調べられますか?」
「沖縄の衣装を着るので、髪の結い方を知りたいのですが…」などなどいろいろな町の方のご相談を受け、一緒に探すお仕事をしてきました。どこで?…それは、まちの図書館で、です。

図書館の中 本棚が並ぶ

えっ?図書館ってどんなとこ?

そんな風に思った方もあるかも。そう、19歳でアルバイトに入った私もそうでした。図書館といえば、絵本に小説、料理や買えそうにない美術書(?)など、心惹かれる本を選んで無料で借りられる所じゃないの?続きを読む

開きかけの本

自分で本を作って売る

私の趣味は同人誌を売ることだ。同人誌とは、自分で書いたマンガや小説を印刷した本のことだ。素人が作った本は、本屋さんには置いてもらえないので、「同人誌即売会」というイベントで売る。そこではバザーやフリーマーケットのように、個人が小さなスペースを借りて、自分が作った本を売っている。

一番、大きなイベントは東京で開かれる「コミックマーケット」。「コミケ」と略されていて、テレビでもニュースに出るくらい有名だ。何十万人も人が集まる。売れるのは人気のマンガやアニメのキャラクターが出てくるエッチな本。何百冊も売って、大儲けしている人もいる。

私が作っている同人誌は全然ちがう。いまはミステリー仕立てのオリジナル小説の本を作っている。値段は1冊100円。ほとんど売れない。続きを読む

Sky

電子本の図書館だ!

青空文庫http://www.aozora.gr.jp/)というサイトには、文学作品が集められています。アーカイブとか電子図書館とか呼ばれているウェブサイトです。もう知っている人も多いと思うんだけど、「聞いたこともない」という人に立て続けに会ったので、紹介します!

青空文庫は「図書館」なので、当然ですが、本がたくさん置いてあって、無料で読めます。ただ、ウェブサイトですから、紙に印刷した本があるわけではなく、スマホ、タブレット、パソコンなどの画面で読むわけです。これがそのホームページ:

 青空文庫トップ

青空文庫トップページ画像

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ネコとネズミが向き合ってる

テレビアニメの「トムとジェリー」を知っているのは、もう中年以上の人ということになるだろう。

図体はデカイがちょっとおバカな飼い猫のトムが、毎週かしこくてすばしっこいネズミのジェリーを追いかけては、あえなく返り討ちにあって散々なことになるというストーリー。

いま思うと、トムはやはり食い気のせいでジェリーを追いかけてたのだろうから、ネズミから見ればとんでもない奴ではあろうが、ぼくは子ども心に何故かトムびいきで、毎回平然とトムを陥れて悲惨な目に会わせるジェリーの姿が、憎らしくてたまらなかった。

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